そして病院で初めて耳血腫と言う病気を知りました。
耳にだけ住み着く耳ダニが原因で起こります。
耳ダニが居るととにかく猛烈な痒みに襲われ、猫は後足で頻繁に掻きむしります。
その時に耳の毛細血管が切れ、そこに血が溜まりパンパンに膨らみます。
病院でその溜まった血液を抜き、耳の中に薬を垂らします。
それまでパンパンに腫れていた耳は、血液を抜くとしわしわになってしまいますが、聴覚には全く問題ありません。
それはそれで一安心したのですが、お腹にピンポン玉位の大きさの出来物があり、先生に乳腺腫瘍ですねと言われ…!?
手術で取り除く事になったのですが、その前にエイズ白血病検査をしてみると、エイズ陽性でした。
その時診て頂いた先生は、今考えると慎重派の先生で、全身麻酔を要する手術なのでその手術がきっかけでエイズを発症してしまう可能性や、腫瘍部分だけを取り除いても乳腺全て取らないと、また別の場所に出来る可能性や年齢的な事も考えると、手術しないで温存した方が長生き出来るのではないかと言う判断でした。
最終的に手術しないと決めたのは私ですが、今でもその時の判断が正しかったかどうかは分かりません。
そしてまるとの生活も一年が過ぎた頃、ご飯を食べなくなってしまいました。
食べると歯ぎしりの様な音がして、病院で診てもらうと口内炎がかなり進んでいて、食べたくても食べられない状態だったのです。
それからはa/d缶とロイヤルカナンの高栄養免疫サポートをお湯で溶き流動食の日々です。
かなり高カロリーの食事ですが、まるの体はどんどん痩せていき、4kgあった体重は3kgを切っていました。
ピンポン玉くらいの大きさだったお腹の腫瘍もどんどん大きくなり最終的に大人の握りこぶし程にまで大きくなり、真ん中がすり鉢状に窪んでそこから血液混じりの膿が常に滲み出て悪臭を放っていました。
その腫瘍部分を傷つけない様、オムツにガーゼを縫い付けトイレは貧血でフラフラになりながらも自力でするので、お尻部分は切り取り一日何度か取り替えていました。
腫瘍部分を舐めない様エリザベスカラーをしていたのですが、どうしても気になる様で舐めようとカラーの先で傷つけ大出血をし、かなり危険な状態に陥った事もありました。
腫瘍部分の表面の皮はかなり薄く、ちょっとした刺激で簡単に破けてしまいます。
年末に二度目の大出血があり何とかその時は止血出来たものの、それからは日に日に衰弱していき最後の一週間は水すら受け付けない状態で歩く事も立つ事も出来なくなってしまいました。
それなのに亡くなる前日の深夜、私がうとうとしてしまった時に今まで聞いた事もないまるの叫び声に近い鳴き声を耳にし、目がさめました。
重い貧血状態で動けないはずのまるが、トイレを置いてあった場所まで歩いて行ったのです。
その時に私はまるのプライドの様なものを感じました。
オムツはしているし、シートも敷いているのでどこでしたって構わないのですが、本人はどうしてもトイレまで辿り着きたかったのでしょう。
そして翌日その事が嘘だった様にまたぐったりと動けず苦しそうに口を開け呼吸が荒く速くなり、最期は手足をバタバタさせ目は大きく見開き唸り声の様な鳴き声を出し、苦しんで苦しんで私の腕の中で逝きました。
最後の最後まで瞬きさえせずにまるの顔を見ていたかったのに、涙が溢れまるの顔が歪んでしまうので何度も何度も涙を拭き、まるの名前を呼び続けました。
亡くなってしまった事が信じられず、このまますこし横にしていればまた目を覚ますかも知れないと、亡くなった事を認めたくない私は、まるをそっと寝かし暫くしてまるを触ってみると、さっきまで温かかったまるの体は嘘の様に冷たく硬くなっていました。